『聖女』として、清く正しく生きてきた少女、アウローラ。聖堂の中でも一際女神の寵愛を強く受けた彼女に、『普通』はなかった。民のため、神のために日々身を捧げ続ける毎日だった。しかしそんなある日、教会に黒い髪と眼を持った、不思議な少女が現れる。祈りの日、神々の祭壇の上に突如光と共に舞い降りたその少女を、人々は『聖女』と呼んだ。『聖女』の名を名乗れるのは、一人だけ。国のためだけに生きてきたはずのアウローラは、あっさりと『聖女』の名を奪われた。現代の『聖女』と前代の『聖女』が同じところにいてはいさかいの種にしかならないと判断され、彼女は『聖女』の名を奪われ、更に、ずっと過ごしてきた大聖堂からも追い出されることに。彼女が次に派遣されたのは、何もない閑静な国境付近の村。誰にも見送られることもなく、一人大聖堂から出たその瞬間、彼女は思い出す。「…………あら、わたし殺されちゃうのかしら?」この世界が、自分に優しくない破滅エンドしか残っていないクソゲーだということを。死にたくない元『聖女』は、考えた。「よし、ヒロインの座を奪ってしまえ」と。
文字数 4,057 |  最終更新日 2021.1.23 |  登録日 2021.1.21