「リフォード様、またフェリスの所へ行かれていたのですか?」
やや彼を問い詰めるような口調でそう話をするのは、リフォードとは婚約関係にあるリリアだ。
「平民女の君には分からないだろう。フェリアは僕が心の底から愛する妹なんだ。そんな彼女のために時間を使うのは、生まれてきた使命を果たすためにも等しい」
乱暴な口調でそう追及の言葉を交わすリフォード。
「そのような言い方をされるのなら、どうして私と婚約など…」
彼が全くリリアに感情を抱いていないのなら、この婚約は全くの無意味という事になる。しかし彼は現実に、リリアとの婚約を望んで結んでいた。しかしそこには彼の黒い事情が…
「なんだ、そんなことか。簡単な話だ、平民から婚約者を取ることとなれば、僕はそれだけ平民の心を思っている人間であると皆が勝手に勘違いしてくれる。将来貴族となるためには、こういうところで票を稼ぐのは大切な事だからな」
「…」
あきれた、と言いたげな表情を浮かべるリリア。しかし彼女もまた感じ取ってはいた。相姦上げた上での婚約なのではないかと。
だからこそこのように答え合わせを行った段階で、もう見切りをつけたのかもしれない。リフォードが自分の使命を語ったように、彼女にもまた自分の使命があったのだから。
「これ以上詮索するなら、婚約破棄してもいいんだぞ?代わりなんていくらでもいるんだ。平民出身であればだれでもいいんだからな」
余裕の表情を浮かべているリフォード。この表情が維持できるのも、残り短い時間だけだった。なぜなら、彼はすべての真実を知ってしまう事になるのだから…
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文字数 1,024 | 
最終更新日 2023.12.01 | 
登録日 2023.12.01