「篠崎にしか頼めないことがある。ーーーー私を抱いて」 極道一家の娘・雨月(うづき)は出自を隠しながら大学に通っていたが、ある日ガラの悪い男達に誘拐されてしまう。あわや貞操の危機といったところで乗り込んで来た世話係の篠崎に助け出されたが、気丈に振舞って見せながらも内心大きなショックを受けていた。「平気になりたい」 その晩、様子を見に来た篠崎に雨月はぽつりと零す。 平気になりたい。だから、慣らすための練習に付き合ってと。 いつか、またこんなことが起きて。 次は間に合わないかもしれなくて。 望みもしない相手に好き勝手されるくらいなら。それなら。 "せめて最初の想い出は好きな男と"と賭けに出た意地っ張り拗らせお嬢と、"思い詰めたお嬢が他の男相手に馬鹿な真似を仕出かすくらいなら"と手を出してしまった堅物世話係の、どこまでも淫らなすれ違い。
文字数 116,585 |  最終更新日 2022.7.01 |  登録日 2022.6.03