せっかくのクリスマス。私は仕事で、婚約している彼とは一緒にいられなかった。よりによって、夜勤。翌日、家に帰ってみると、彼の様子がどこかおかしい気はしたけれど、鈍い私は気にしなかった。真実を知ってしまうのは、それからしばらく経った後のこと。高校の頃の友達の一人が教えてくれたのだ。「あの、真子。これ、さ。見せて良いのかどうか悩んだんだけど」まだ何も知らない私は、朗らかに答えた。「なに? なんで遠慮しているの?」泣きそうな顔をしながら、香恵は私に自分が持っていたスマートフォンを押しつけてきた。「ごめん。でも、知っておいた方が良いと思うから」そういって、もう私とは目を合わせてくれない。カエがそれだけ深刻な様子になっているのには、きちんと理由があったのだ。スマートフォンに表示されているのは、とあるSNSのアカウント。そこに写っているのは、高校の頃からの親友であるミサキがサンタクロースのコスプレをしている写真だった。ただし、私の婚約者と一緒に……。しかも、私と婚約者が一緒に暮らしている部屋で……。(えへへ。私、もう自分で腰振っちゃってる!笑)「なに、これ……」親友と婚約者の浮気……。婚約者のタカトからは想像もできない言葉が返ってきた。「お前はミサキに嫉妬しているだけなんだ! ミサキの悪口を言うな!」問い詰めても、全く反省しない二人。人生の全てを壊されて、私の生活はボロボロになる。仕事も辞めて、酒浸りの生活。ただし、浮気の意味は私が思っていたよりもはるかに酷いもので……。そんなことが、私の人生の転機になった。イケメンで頭の良い新しい婚約者にプロポーズされる私。互いに罵り合う二人、見苦しく泣きわめく親友、私の魅力に今更気がついたと言い張る婚約者……。「こんなことから、浮気されて全然良かったじゃん! 浮気してくれて、ありがとう!」
文字数 23,230 |  最終更新日 2021.2.28 |  登録日 2021.2.21